「大型コンテナ船における船体構造ヘルスモニタリングに関する研究開発」の成果がNKガイドラインに採用

株式会社MTI(以下「MTI」)が、日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)および日本シップヤード株式会社(以下「NSY」)と共に、国土交通省の推進する海事生産性革命(i-Shipping)の支援事業として取り組んだ「大型コンテナ船における船体構造ヘルスモニタリングに関する研究開発」の成果が、一般財団法人 日本海事協会(以下「NK」)発行の「船体構造モニタリングに関するガイドライン」に採用されました。
この共同研究には研究パートナーとして、国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所(以下「海技研」)、国立大学法人 横浜国立大学(以下「横国大」)、一般財団法人 日本気象協会(以下「気象協会」)、国立大学法人 東京大学(以下「東大」)が参画しました。

1. 背景

近年、船舶の大型化が進むとともに、安全運航や環境保全への関心は年々高くなっており、実海域における海象や操船による影響を考慮した船体構造の強度評価や操船判断支援技術の確立が求められてきました。
本研究では、運航中の船体にかかる力のデータを収集し、航海データと併せて解析することで本船の安全運航支援が可能なシステム開発を目指してきました。

2. 共同研究の概要

共同研究では、船体各所に配置された応力計測センターを用いて波により船体に生じる力のデータを収集する船体構造モニタリングシステムの開発を実施しました。システム開発に当たっては①実航海におけるデータの収集②船体発生応力の推定手法の開発③累積疲労被害度の推定手法の開発④ユーザー視点に立ったシステムの開発-を行うこととし、下記の①~③について研究を実施しました。

センサー配置イメージ

①実航海におけるデータ収集 (気象協会/MTI)
対象コンテナ船の運航データ及び遭遇海象データを収集し、計測された応力データと海気象による外力の確認を実施。また、レーダ波浪計や波浪追算値比較の実施。

②船体発生応力の推定手法の開発 (NSY/横国大/東大)
実海域のホイッピング応答特性の把握や、船体応答モニタリング結果から方向波スペクトルを推定する技術の開発、またiFEMを用いたひずみデータに基づく応力の逆推定を実施。

③累積疲労損傷度の推定手法の開発 (海技研)
計測データを用いた実船の累積疲労被害度の算出、累積疲労損傷度の比較、縦曲げ振動が疲労被害に及ぼす影響の算出を実施。

 

その結果、航海系データ(船速、喫水、プロペラ回転数、積付け状態など)の解析と合わせて、本船が遭遇している海象条件の推定や、船体における発生応力、疲労蓄積について推定、評価し安全運航を支援する手法(以下、「本手法」)を開発しました。

遭遇海象の推定(左図)と発生応力の推定結果(右図)

3. 共同研究の成果

本研究で得られた船体構造モニタリングシステムに対する技術要件および本手法を研究成果として、NKがこのほど発行した「船体構造モニタリングに関するガイドライン」に採用されました。
本ガイドラインは、構造モニタリングシステムの機器やシステム全体に対する技術要件、検査手順について規定した本編と、本評価手法などを用いた船体の疲労強度評価の機能に関するAppendix A、操船支援の想定したデータ活用の機能に関するAppendix Bで構成されています。