LNG R&D

掲載日:2022年10月3日

LNG関連機器のCondition Based Maintenance(CBM)検討

LNG*1 Cargo PumpやGas Compressor*2といったLNG関連機器は、故障した際に本船の荷役や運航が止まることで非常に大きな損害を出すことがあり、適切なメンテナンスにより健全な運転状態が保たれていなければなりません。現在はTime Based Maintenance(TBM)といって一定期間ごとに機器を開放点検して、消耗が生じる部分については一律に交換することが定められています。この方法では機器の異常や個体差により、定められた開放期間よりも短い時間で消耗が進んで運航中に大きなトラブルが発生したり、逆に健全な状態にもかかわらず開放点検をしたり交換の必要のない部品までメンテナンスの対象となり、非効率な運用となるケースもあります。CBM*3では機器の状態を監視して異常の早期発見・対応や健全性の確認を行うことで、適切なタイミングで、大きなトラブルにつながる前にメンテナンスを行うことを目的としています。

LNG Cargo PumpにおけるCBM検討においては、新造LNG船に振動計を設置し、LNG Cargo Pumpの状態をモニタリングする手法を前提にポンプメーカーと検討を実施しました。FTA*4、リスク評価手法を用いてLNG Cargo Pumpでは、その振動を計測することでインペラ軸のボールベアリングの状態を監視する手法が適しているであろうことが確認され、CBM導入によるコストメリットも算出しました。

FTAの一例

LNG運搬船のSIMSデータ利活用

現在、一般商船ではSIMS*5データを用いて陸上で本船の各機器の状態を監視し、異常があれば速やかに警報を出して乗組員の仕事を支援する異常検知システムの運用が開始されています。LNG運搬船に関しても、この異常検知システムを用いて状態監視をする計画としていますが、LNG運搬船はLNG貨物関係の機器やLNG燃料機関特有の監視対象があるため、それらの異常検知に必要なデータ選定とロジックの検討作業を進めています。

異常検知手法の一つとして任意のSIMSデータを利用して簡単なロジックと閾値を設定して警報を出力するCondition Alarmがあります。LNG運搬船向けの異常検知ロジックを実装することで、LNG運搬船についても一般商船と同様に、陸上スタッフが自動で異常を知ることができ、より安全運航に寄与することができると考えています。

LNG運搬船のダッシュボード

(執筆担当:菅野 聡太、寺 剛史、古川 幹貴)

*1 LNG(Liquified Natural Gas):液化天然ガス。約-162℃で運搬・保管され、発電用燃料や都市ガスの原料等として用いられる。

*2 LNG Cargo Pump, Gas Compressor:LNGを揚荷する際に用いられるポンプ。Gas CompressorはLNGタンク内で気化したガスを陸側施設や船内機器に移送するためのコンプレッサー。

*3 Condition Based Maintenance:機器の状態に基づいて保守点検を実施すること。

*4 FTA(Fault Tree Analysis):機器の故障の考えられる原因を列挙し、それぞれの原因を系統的に掘り下げて根本原因となる部品特性まで下位展開していく手法。

*5 SIMS(Ship Information Management System):当社と日本郵船が開発した、船上の様々なデータを船陸でモニタリングし、最適運航に活用するためのシステム。

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