バッテリーハイブリッドシステム活用で船舶のGHG排出削減へ

– デジタル空間でのシミュレーションで設計最適化を共同研究 –

日本郵船株式会社
株式会社MTI

日本郵船株式会社(以下「日本郵船」)および日本郵船グループの株式会社MTI(以下「MTI」)は、米国船級協会(以下「ABS」)、船舶用主機関設計会社の
Winterthur Gas & Diesel Ltd. (ウインターツールガスアンドディーゼル、以下「WinGD」)とともに、船舶の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」)排出量の削減効果最大化を目指し、船舶用主機関のバッテリーハイブリッドシステムを活用し、船舶設計を最適化するための共同研究を開始しました。

船舶は、荒天時などに強い波や風の影響を受けながらも航行速度を維持するため、主機関の回転数を大きく上げることがあります。このように機関の回転数が大きく変動するときに機関に負荷がかかる現象を「負荷変動」といいます。また、船舶のプロペラシャフトには軸発電機が接続され、主機関の回転数に応じた電力を発生させて船内に電力を供給しています。

バッテリーハイブリッドシステムは、主機関が負荷変動したときに、バッテリーから船内に電力を供給することで軸発電機の負荷を軽くし、船が推進に使える力を増やすことができる上、効率的な主機関の運転が可能となる仕組みで、外航船舶での導入が進んでいます。また、バッテリーハイブリッドシステムは発電機関の代わりに船内の機器運転用、生活用などの電力供給を行うことができるため、その活用はGHG排出量の削減にもつながります。

今回の共同研究は、バッテリーハイブリッドシステムによるGHG排出量の削減効果を最大化するため、日本郵船、MTI、ABS、WinGDの各社が持つモデル化(注1)技術を結集して船舶の統合シミュレーションモデルをつくることを目指します。

具体的には、日本郵船とMTIの持つ船舶の実海域性能(注2)、WinGDの持つバッテリーを含めた機関プラントのモデル化技術を組み合わせて船舶全体の統合モデルをつくり、ABSが第三者の立場でGHG削減効果の評価についてアドバイスを行いながら、4者が共同でデジタル空間での船舶の試設計を行います。そして、実海域の気象海象を想定したシナリオで運航シミュレーションを行い、明らかになった課題を反映してシミュレーションモデルを改善し、船舶設計の最適化を目指します。本共同研究は、設計段階から船舶のユーザーである日本郵船およびMTIと、船舶機器メーカーのWinGD、そして船舶の評価機関であるABSがデジタルモデルを共有してシミュレーションを行い、連携して船を造り上げるという海事産業において画期的な取り組みです。

シミュレーション実施のイメージ

今後、日本郵船とMTIは、ABS、WinGD、造船所と協力し、共同研究で得られたシミュレーションの結果と実際に竣工した船の実海域でのデータを照合し、シミュレーションの精度を向上させることで、今後の日本郵船グループの新造船計画における中心的な技術としていきます。
また、バッテリーハイブリッドシステムの運用・制御方法の最適化にもシミュレーションを活用していきます。本共同研究の開始は、その第一歩となります。

日本郵船グループは、ESGの経営戦略への統合を更に加速させることを掲げた、「NYKグループ ESGストーリー」(※)を2021年2月3日に発表し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動を進めています。環境負荷の低い輸送モード提供のため、船舶(ハード)・運航(ソフト)両面の改善、またそのためのデジタライゼーションの活用を目指しており、当共同研究の実施もその一環です。当社グループのESG経営を力強く推し進めるべく、「Sustainable Solution Provider」として新たな価値創造をしてまいります。

※NYKグループ ESGストーリー
日本郵船グループにおいて、ESGを経営戦略に統合するための考え方と具体的な取り組みを明示する指針。詳細は以下プレスリリースからご覧いただけます。

「NYKグループ ESGストーリー」を発表

各社概要

日本郵船株式会社
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 長澤 仁志
ウェブサイト: http://www.nyk.com/

株式会社MTI
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 石塚 一夫
ウェブサイト: https://www.monohakobi.com/ja/

(注1) モデル化
機器の動作や性能等を主に数式を用いて表現すること。

(注2) 実海域性能
船舶が実際に運航する波や風のある海域の中での船舶の速力、燃費等の性能。