IoTセンサーを用いた新・艙内環境監視システムの実証実験に成功

~ドライバルク船の積み荷ダメージリスク軽減へ 本格運用に向け大きく前進~

日本郵船株式会社
NYKバルク・プロジェクト株式会社
株式会社MTI

12月5日、日本郵船株式会社とNYKグループのNYKバルク・プロジェクト株式会社、株式会社MTIの3社共同で行っていたIoTセンサー(注1)を利用したドライバルク船の艙内計測の35日間にわたる運用実験が終了し、実航海での有効性を確認しました。

航海中の艙内環境の把握はドライバルク船での海上輸送品質を保つ重要な要素です。現在は乗組員が定期的に艙内へ入り目視によって積み荷状態を確認することが一般的ですが、乗組員による異常の見落としリスクや、荒天時に艙内へ入ることができず点検を行うことができない等の課題があります。このような課題を解決するため、有線での通信、給電を必要とする機器による艙内環境監視技術は現存するものの、本船工事が必要かつ、大きな投資が必要となることから活用は限定的でした。

そこで3社は、本船工事を必要としない独自の新システムを開発しました。そのシステムはドライバルク船の艙内の24時間遠隔監視とデータ収集、過去データの分析と未来の状況を予測した貨物ダメージリスクの可視化ができる、積み荷のダメージリスク軽減のための総合管理システムです。(特許出願中)

艙内からの無線通信、センサー部分への電源供給が困難な環境であるドライバルク船においても、LPWA無線通信技術(注2)を利用したIoTセンサーを用いることで、航海中での船倉内の温湿度等の輸送環境を船橋からリアルタイムで遠隔監視が可能です。加えて、積み荷へのダメージとなる可能性のあるデータを観測した場合には、アラーム等で乗組員に知らせる機能も実装されています。更には、艙内に設置するセンサー部分を取り換えることで、温湿度以外にも加速度、漏水、照度、CO(一酸化炭素)などを監視することができます。今後これらのデータを蓄積することによって、過去データ分析からの状況予測も可能になり、更なる輸送品質の向上が期待されます。

今回行った実験は、艙内の24時間遠隔監視とデータ収集の運用実験です。日本製鉄株式会社ご協力のもと、同社のメキシコ向け鋼材積み本船「GLOBAL MIRAI」(注3)の艙内に温湿度センサーを設置し、データを収集。更にそのデータを船橋に送信して、専用PCから艙内状況を監視しました。今後はシステム搭載船を増やし、更なるデータの蓄積とその分析を進めていく所存です。

NYKグループは今後も新たな技術の開発や既存技術の応用によって、輸送品質の向上に取り組んでまいります。

NYKグループは、ESGの経営戦略への統合を更に加速させることを掲げた、「NYKグループ ESGストーリー 」(※)を2021年2月3日に発表し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動を進めています。2022年3月24日には、2021年度のESG経営の具体的な取り組みと施策、超長期視点での持続可能な成長戦略を紹介する「NYKグループESGストーリー 2022 」(※※)を発表しました。NYKグループは、温室効果ガス(GHG)排出量削減による環境負荷の低い輸送モードを提供することで、「Sustainable Solution Provider」として新たな価値創造を推進してまいります。

※NYKグループESGストーリー
NYKグループにおいて、ESGを経営戦略に統合するための考え方と具体的な取り組みを明示する指針。詳細は以下プレスリリースよりご覧いただけます。
https://www.nyk.com/esg/esg-story/

※※NYKグループESGストーリー2022
「NYKグループESGストーリー」で掲げたESGの経営戦略への統合に向けた具体的な取り組みと、今年度の施策を紹介した資料。詳細は以下リンクよりご覧いただけます。
https://www.nyk.com/news/2022/20220324_01.html

(注1)IoTセンサー
IoTはInternet of Thingsの略。センサーをネットワークに接続して情報を収集・管理する機器のこと。

(注2)LPWA無線通信技術
LPWAはLow Power Wide Areaの略。低消費電力かつ長距離での通信を実現する無線通信技術のこと。

(注3)GLOBAL MIRAI
<本船概要>

船名 : GLOBAL MIRAI
全長:189.99m
全幅:32.26m
DWT:58028トン
船籍:パナマ
建造年:2012年

会社概要

NYKバルク・プロジェクト株式会社(NBP)
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長 野瀬 素之
ウェブサイト:https://nbpc.co.jp/
事業内容:約45隻の在来船、2隻のモジュール船、約110隻のバルカーを運航しており、風車を含むプロジェクト貨物、プラント貨物、鋼材、バルク貨物など多岐に渡る貨物の輸送を担っています。在来・プロジェクト貨物輸送部門においては、邦船社唯一の重量物船、モジュール船運航船社としてワールドワイドでサービスを展開しています。また21年8月、22年1月には新造重量物船が就航し、長尺で重量物貨物の海上輸送にも対応しています。

株式会社MTI
本社:東京都千代田区
代表者:代表取締役社長  石塚 一夫
ウェブサイト:https://www.monohakobi.com/ja/
事業内容 : 環境・省エネ技術の研究及び開発、船舶運航技術の研究及び開発、船舶運航に関わる情報技術の研究及び開発、輸送品質に関わる研究・開発及びコンサルティング、物流現場ソリューションの研究・開発及び提供、海洋分野を含む新事業に関する調査及び研究を行っています。