脱炭素化への挑戦 -「NYK スーパーエコシップ2050」発表

日本郵船グループは中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の取り組みの一環として、船舶の脱炭素化に向けたイノベーションを結集した新コンセプトシップ
「NYKスーパーエコシップ2050」を考案しました。

背景

日本郵船グループは、事業活動を通じ人々の暮らしを豊かにすることが使命であり存在意義で
あるというグループ企業理念“Bringing value to life.”のもと、これまで積極的に社会的課題に取り組んできました。
そして今年度からスタートした中期経営計画では、事業戦略にESG(環境・社会・ガバナンス)を取り込み、新たな中長期環境目標を設定しました。その目標達成のため、当社とフィンランドの船舶技術コンサルタント会社のElomatic社(エロマティック)と共同で、2009年に発表した「NYKスーパーエコシップ2030」の各要素技術の見直しを行い、グリーンとデジタライゼーションの観点から日本郵船グループの技術力を結集させた、グループ企業理念を具現化する新たな
コンセプトシップを考案しました。

「NYKスーパーエコシップ2050」の概要

本船は自動車専用船をモデルとした2050年のコンセプトシップです。船体重量の軽量化や船型の最適化により船体の摩擦抵抗を低減するほか、燃料電池を利用した電気推進や高効率の推進装置の採用等により、現在運航されている一般的な船舶と比べ70%のエネルギー量削減が可能です。また、太陽光パネルを搭載し、燃料には化石燃料の代わりに再生可能エネルギー由来の水素を使用するため二酸化炭素(CO2)排出ゼロ=ゼロエミッションを実現します。

         NYK スーパーエコシップ2050 紹介映像

<主な特徴>

船体

・船体重量の軽量化
船体構造には数学的・力学的に最適化された形状を採用し、素材には複合材などを使用することで軽量化を図ります。一方、軽量化により船体の安定が損なわれぬようコンピューター制御によるジャイロスタビライザーなどの動揺軽減装置を導入します。

・摩擦抵抗の低減
空気潤滑システムにより、空気を船底に送り込んで泡を発生させて海水の摩擦抵抗を低減します。停泊時には船体清掃ロボットによるクリーニングを施し、船速の低下を予防します。

・推進効率の向上
従来のプロペラではなく、複数のフラップ状のフィンをイルカの尾の動きのように動作させることで推進効率を高めます。

エネルギー

再生可能エネルギー由来の水素を燃料とし、排熱エネルギーも利用する高効率な燃料電池を使用します。太陽光エネルギーも利用することで長距離の航海にも対応が可能です。

保守整備

船体の状況をデジタル上に再現するデジタルツイン技術により、陸上専門家によるリアルタイムな分析、事故や不具合を未然に防ぐ最適な整備計画の立案が可能です。

入出港・荷役

最適運航計画を高度化し、個船にとどまらず、港湾施設の稼働や包括的な船隊の最適化を行います。また、船舶の定時・定期運航の精度向上、自動着桟や船から船への貨物の載せ替えによる荷役作業を効率化します

<現在の自動車専用船との比較>

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今後の展開

日本郵船グループは脱炭素化を実現するため、このたび考案した「NYK スーパーエコシップ
2050」のコンセプトに採用した省エネ・温室効果ガス削減技術の開発と継続的な実船採用に向けて今後も取り組み、企業価値・社会価値の持続的創出を目指します。

※(注)中長期環境目標
日本郵船は本年3月に、温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gases)排出量を2015年比で2030年までに30%削減、2050年までに50%削減する目標を設定しました。目標達成のために、ハードウェアの技術開発やデジタルゼーション進展より見える化・効率化・最適化に努め、配船、運航や荷役効率の向上、ゼロダウンタイムの実現に取り組んでいます。なおこの目標はSBTイニシアチブから、科学的根拠に基づく目標として認定を取得しています。

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