機関プラント自律化へ、次世代CBMの検証開始

~常時監視・診断で高度なメンテナンスを実現~

日本郵船グループは船舶の機関の新たな整備・管理手法である次世代の状態基準保全(CBM、注1)の確立に向けた共同研究契約を締結し、
実船での検証を開始しました。
センサーが入手する機関プラントのデータを船級協会や舶用機関メーカーと共有して常時監視することを通じて、高度な保守管理を可能にします。
将来はこの次世代CBMの技術を発展させて有人自律運航船の実現に寄与します。

背景

船舶の整備には主に時間基準保全(TBM)が用いられていますが、TBMのもとでは機関に疲労や故障がなくても2、3年に一度検査のために数週間船の運航を止める必要があり、一方で運航中に予期しないタイミングで故障しスケジュールが大幅に遅れるといった課題があります。
ICT(情報通信技術)の発達に伴い船陸間の大容量データ送信が可能となったことを受けて、日本郵船グループはCBMに着目した最適なメンテナンスを行う研究を進めてきましたが、この度、次世代のCBMの創出を目指して各パートナーとの共同研究契約の締結に至りました。

共同研究の取り組み概要

日本郵船グループが開発したSIMS2(注2)に加え、舶用大型主機関に新たなセンサー等を搭載して運航中の軸受の温度や振動値などのデータといった運航データを詳細に取得し、機関メーカーや船級協会とリアルタイムで共有して機関の状態を常時監視します。加えて、機関メーカーのノウハウを生かした故障予知や寿命予測の研究を進め、最適なCBM指針を作成し実船で検証します。
これらの研究成果を船級協会と共有し、CBMをベースとした新たな船級検査体系の構築に役立てます。

研究内容 パートナー
デイーゼルエンジン主機関における
CBM実現に向けた共同研究
日本郵船株式会社、当社、
一般財団法人 日本海事協会、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
蒸気タービン主機関における
CBM実現に向けた共同研究
日本郵船株式会社、当社、
一般財団法人 日本海事協会、三菱重工マリンマシナリ株式会社

今後の展開

故障予知、寿命予測の精度を向上させ、将来的には、AI(人工知能)が機関プラントの状態を常時監視し、運航スケジュールなどの情報を組み合わせて
自らがメンテナンス時期を判断する自律型の次世代CBMに発展させることで、最適な機関プラントの運用を目指します。

次世代CBMの確立は、船舶の高度自動化、延いては自律化へのステップであり、日本郵船グループが目指す有人自律運航船(注3)の実現にも大きく
寄与できる革新的な手法です。

日本郵船グループは中期経営計画〝Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”に基づきデジタライゼーションの取り組みを加速させ、
今後もパートナーと連携し、運航ビッグデータを活用した海事産業のイノベーションに取り組みます。

次世代CBMのイメージ

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(注1)状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)
機器が故障した後や定期的にメンテナンスするのではなく、機器の状態を常時モニターして状態に応じて都度メンテナンスを行う予知保全のこと。
現在は、周期的に故障する設備・部品に対して交換周期を予め決めておき、定期メンテナンスする = TBM (Time Based Maintenance)が行われている。

(注2)SIMS2
船舶の運航状態や燃費、機器の状態に関する詳細なデータを記録すると同時に、船陸間でのタイムリーな共有を可能とする装置。

(注3)有人自律運航船
日本郵船グループが目指す有人自律運航船とは、高度な先進技術が安全かつ効率的な運航をサポートする船舶のこと。

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関連リンク

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