MTIジャーナル

MTI Journal.01

現場スタッフとともに
様々な課題を解決

粟本 繁


物流グループ長

2018年2月14日掲載

※職名は掲載当時

地味だけどなくてはならない“物流”

貨物を運んだり保管したりする“物流”という単語は、震災時の物資不足や宅配の大きな伸びと、それによる配送員人材不足の問題などがニュースで取り上げられるようになって一気にメジャーになり、重要な社会インフラのひとつであることが再認識されました。しかしながら、普段の生活の中では依然としてほとんど認知されていないと言って良いくらいの分野です。

私の所属する物流グループでは、この裏方でありながら重要な物流分野における研究開発を行なってきていますが、本稿ではその中でもかなりユニークな分野である“完成車物流”についてご紹介します。

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完成車輸送の特殊性

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完成車(工場出荷されナンバープレートが付いていない状態)は、“鏡面で傷付きやすい塗装が鋼板に施された繊細かつ高価な大型貨物”です。車輛毎に固有のIDによる管理が求められる一方で、その大きさ・重量や輸送効率を考えると、梱包して段積みや輸送パレットに乗せて運ぶことはできません。1台1台作業員が運転したり、専用のキャリアカー(左下写真)に積載して運搬したりする必要があり、物流作業に非常に手間と注意を要する貨物と言えます。

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一方、完成車の製造拠点は世界各地にあり、その消費(販売)地も世界各地にあります。近年、特に経済成長の著しい新興国向けの販売が活発で、それに伴い新しい物流への対応が求められています。

日本郵船では完成車の自動車専用船(PCC:Pure Car Carrier)での海上輸送に加え、生産国の工場から販売国の販売店まで輸送の全工程を請け負う取組みを進めています。

現場環境にあわせて試行錯誤

日本は製造と販売の一大拠点ではありますが、完成車の製造・販売拠点は世界各地が対象です。海外における物流現場の環境は日本と大きく異なるところが多々あります。法律や慣習はもちろん、国民性も国や地域によって様々です。

常に高品質なサービスを世界中のお客様へ提供するために、各国の物流現場環境とニーズを的確に把握し、そのニーズに合わせて、完成車物流全般における安全性向上、輸送品質・現場作業品質向上、現場作業効率向上などに資する技術開発を行なっています。

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技術開発・検証にまつわる具体的な話は続編でご紹介しますが、ここで現場作業について少しだけご紹介します。

① 極寒地での実験

完成車物流拠点の存在する地域は、東南アジア圏の熱帯地域もあれば、真冬は軽くマイナス20度を下回るような地域もあります。従って、例えば作業品質を所定のレベルにするためのアプローチも、現場環境への対応が必要となります。左上写真は、極寒地でのIT機器操作性を旭岳で事前確認しているところです。

② 広大な現場を歩くことも

車輛位置管理システムを評価している欧州の現場は、広大すぎて気が遠くなりそうです。東京ドーム8個分くらいの範囲をひたすら歩いて実験することもあります( 2番目写真)。

一日の業務が終わり、地元ならではの美味しい料理とお酒で疲れた体をほぐします(3番目写真)。

③ 笑顔が一番!

現地スタッフとのピンナップ。彼らの笑顔が現場課題解決に向けての大きな原動力となり、またこの仕事をやっていて良かったとしみじみ思う瞬間です(下写真)。

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