自動運航船コンセプト・フレームワーク構築
掲載日:2025年9月22日
自動運航船・自律運航システムの商業利用に向けた取り組み:システム統合フローの構築
船舶の自動運航は、認知・分析・計画・行動を担う要素技術や、各タスクを担うモジュール・サブシステムを統合することで実現されます。特に、新たに自動化・自律化される物標検知・避航・自動離着岸といった要素技術の活用を前提に、性能や運用条件を考慮しつつ、機械(アルゴリズム)の情報処理能力と、曖昧なものに対しても柔軟な判断が可能な人間による監視・介入を如何に適切に組み合わせ、安全な自律運航システムを構築出来るかが重要な取り組みとなります。操船者や自動運航船に搭載されるシステムと陸上の遠隔支援システムとの間の作用も含む、こういった高度なSystem of Systemsとしての自律運航システムを実運用可能な商用レベルで実現するため、当社はV-Processとして表現される自律運航システムの設計・検証や付随するシステム統合・認証・技術の標準化といったフローの確立を舶用機器メーカー、造船所、国内外の大学や機関などと担っています。合わせて、当社では、V-Processのフェーズにおいて安全観点での要求を特定・具体化するためのリスク評価、機能・性能を評価するための低速域も含む船体運動モデルを活用したシミュレーションや、これらのプロセスをブラッシュアップするためのデータ収集・解析に取り組んでいます。

V-ProcessとMTIの果たす役割(イメージ)

自律運航システムの陸上機能試験
自律運航システムのフレームワーク開発
System of Systemsとして構築される自動運航船・自律運航システムを、ユーザー・享受者の目線を反映しながら上述のシステム統合プロセスに沿って構築するには、必要な機能・安全のための要件を洗い出し、システムやそれらの構成機器の実装や、船主・管理会社・運航会社の構成員による運用において必要な対応へと落とし込む営みが重要な役割を果たします。当社では、自動運航船に関する技術開発や実証プロジェクトへの参画を通じ、自律運航システムに関するコンセプト: “APExS-auto”(Action Planning and Execution System for fully autonomous ships)を策定し、操船のための状況認識・分析、計画立案や制御実行といった機能群や自動運航に付随する陸上からの支援機能が、システム享受者の目線で記述されるConcept of Operations(ConOps;運用設計仕様)を起点にどの様に構築・統合されシステムとして実現されるかを表すフレームワークとして記述しました。APExS-autoの特徴として、自動運航船・システムで想定される運用条件(ODD;運航設計領域)の下で,安全担保のために機械の判断・出力と人間の監視・承認を適切に組み合わせた運用を可能とするため、System of Systems全体にフォーカスしたリスクアセスメント手法を用いることによりシステムや使用者に課せられる要件を特定した点が挙げられます。これらの成果に対し,日本海事協会・アメリカ船級協会・ビューローベリタスの各船級協会*1から、Approval in Principle(AiP)としてコンセプトに対する技術的な実現可能性やリスク評価に関する認証を取得しています。

APExS-autoコンセプトの概要
*1 船級協会:船の技術基準を定め、検査・承認を行い、船級と呼ばれる技術規則適合ステータスの付与を担う独立第三者機関。
(執筆担当:暮田 留依)
関連リンク
Monohakobi Techno Forum 2023講演資料:「自動運航船とMEGURI2040の取り組み」 中村 純
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