船体運動・動揺シミュレーション
掲載日:2025年12月23日
安全運航のための船体運動・動揺シミュレーション
日本郵船グループでは、ESG経営で目指す「これからのNYKグループで創る新たな価値創造の取り組み」における重点テーマの一つとして「安全運航」を掲げています。特に船員や船の安全を確保すること、貨物の毀損を防ぐことは重要な課題です。事故の主要原因の一つとして過大な船体運動・動揺が挙げられます。事故の原因となるほどの過大な船体運動・動揺の発生特徴は、船や貨物の種類によって大きく異なるため、それぞれの船に対して適切なシミュレーション手法を選定することが重要となります。当社では状況に応じた適切なシミュレーション手法の調査・研究を行い、本船で発生する動揺をシミュレーションによって再現・予測をおこなっています。シミュレーションの結果から、大動揺が発生しうる危険条件のスクリーニングや、乗組員の操船を支援する情報の提供が可能となります。今後も適切なシミュレーション手法の研究を継続し、より多くの船を対象に船体運動・動揺シミュレーションを実施することでさらなる安全運航・輸送品質向上へ貢献していきます。

波浪観測

波浪観測と船体動揺データベースの組み合わせによる安全運航の向上
波浪レーダーで計測した波浪情報と、船体動揺シミュレーションを組み合わせることで、様々な運航条件下における船体動揺を予測することが可能となります。これにより、乗組員は船速や針路を適切に調整して横揺れを低減し、運航の安全性向上に寄与することができます。
当社では、波浪レーダーによる波浪観測と船体動揺データベースを組み合わせて活用する運航支援システムの研究開発を進めています。船体動揺データベースとは、実運航で想定される積付け条件および遭遇波浪条件からシミュレーションで計算された船体動揺予測のデータベースです。これらを波浪レーダーによる計測データと組み合わせることで、現在の運航条件(積付け条件、波浪条件、船速、針路の組合せ)に対応する船体動揺を推定し、ポーラーチャートとして可視化することが可能となります。ポーラーチャートは、船速や針路に応じた船体動揺リスクを直感的に把握できる図表であり、乗組員が実際の海象下で針路や船速を適切に調整する判断を支援し、船体動揺低減と安全運航の確保に寄与します。
現在、本システムはコンテナ船および在来船においてトライアルを実施しています。将来的には、日本郵船グループ内の他の船種へも展開し、安全運航へのさらなる貢献を目指します。

(執筆担当:西澤 啓太、Sreenath Subramaniam)
関連リンク
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