船体運動・動揺シミュレーション

掲載日:2022年10月3日

安全運航のための船体運動・動揺シミュレーション

日本郵船グループでは、ESG経営で目指す「これからのNYKグループで創る新たな価値創造の取り組み」における重点テーマの一つとして「安全運航」を掲げています。特に船員や船の安全を確保すること、貨物の毀損を防ぐことは重要な課題です。事故の主要原因の一つとして過大な船体運動・動揺が挙げられます。事故の原因となるほどの過大な船体運動・動揺の発生特徴は、船や貨物の種類によって大きく異なるため、それぞれの船に対して適切なシミュレーション手法を選定することが重要となります。当社では状況に応じた適切なシミュレーション手法の調査・研究を行い、本船で発生する動揺をシミュレーションによって再現・予測をおこなっています。シミュレーションの結果から、大動揺が発生しうる危険条件のスクリーニングや、乗組員の操船を支援する情報の提供が可能となります。今後も適切なシミュレーション手法の研究を継続し、より多くの船を対象に船体運動・動揺シミュレーションを実施することでさらなる安全運航・輸送品質向上へ貢献していきます。

波浪観測と動揺計測

船体運動・動揺は、船の速力・針路及び遭遇する波浪に大きく影響を受けます。速力と針路は操船によって調整することが可能であるものの、波浪は一度遭遇してしまうと操船による調整は不可能となります。そのため通常は、波浪予報を用いて荒天海域の航行を避ける等、過大な動揺が発生しないよう航海計画の時点から対策を講じています。しかし、波浪予報と実際に船が遭遇する波浪では乖離が生じる場合があり、予報よりも過大な船体運動・動揺を生じさせる波浪の中を航行しなければならない状況も存在します。その際乗組員は、予報以外の手段を用いて実際に遭遇している波浪を把握し、操船を行う必要があります。一方、船舶が航行する外洋上では、波浪観測に基づく波浪情報は著しく不足しており、実際には乗組員の目視によって波浪の観測が行われています。当社では航海用レーダー信号から波浪情報を解析する波浪レーダーの搭載を進め、予報や目視観測に依存しない波浪情報が取得できる環境の構築を進めています。また、取得された波浪データは精度検証を行い、計測動揺データも用いた船体運動・動揺の再現・予測に活用しています。今後は、波浪情報の陸上活用を促進し、船陸一体となった安全運航へ寄与するための研究を進めて行きます。

(執筆担当:西澤 啓太)

本件に関するお問い合わせ

お問い合わせは、こちらのメールフォームからご連絡下さい。