機械学習による船体動揺予測

掲載日:2025年9月22日

近未来の船体動揺を事前に把握する

海底石油・ガス田開発や洋上風力発電などにおいて、海上で作業する人員の安全確保に対する課題がクローズアップされており、リアルタイムに船体・浮体の動揺を予測する技術の開発が求められています。

MTIシンガポール支店では実海域における船体動揺の時系列予測に関する技術について、TCOMS (Technology Centre for Offshore and Marine, Singapore)*1とともに研究開発を行っています。対象となる船体の動揺データと、レーダーで取得する波浪場画像の2つから数分後の船体動揺を正確に予測することが可能になれば、いつ作業員・乗組員が安全に作業を行うことができるか、前もって適切に危険性を評価できるようになります。船体動揺の予測は作業船以外でも、最適な固縛手法の検討、大動揺による貨物ダメージの回避など、貨物船の輸送品質の向上にも寄与します。

船体動揺予測手法概念

TCOMSとの共同研究を通じて、過去60秒間の動揺データと2枚のレーダー画像を入力として、60秒後までの船体動揺を予測できる機械学習モデルを開発しました。最初のステップとして、模型船のRAO(周波数応答関数)に基づき生成した船体動揺データと合成した波浪場画像を用いて学習を行い、高い精度で船体動揺を予測できることが確認されました。

今後は実船の動揺センサーおよび波浪レーダーから得られるデータに対して、開発した機械学習モデルを適用し予測精度を検証したいと考えています。将来的には日本郵船運航のCTV(Crew Transfer Vessel)における乗り移り作業などに応用し、安全性向上に資する実用的な船体動揺予測システムの構築を目指します。

ヒーブ運動予測の結果(上:ベストケース、下:ワーストケース)

(執筆担当:Subramaniam Sreenath、菅野 聡太)

関連リンク

Monohakobi Techno Forum 2023講演資料:「機械学習による 波浪中リアルタイム船体運動予測」小川 大智

*1 TCOMSウェブサイト

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