燃焼室内診断ソフトウェアを独自開発 -「きらりNINJA」小型化で利便性も向上-

当社および日本郵船株式会社(以下、日本郵船)は、エンジンの燃焼室内部を自動撮影する装置「きらりNINJA」で得た画像データを活用し、事故の予兆や不具合原因の早期特定につながる燃焼室内診断ソフトウェアを独自開発しました。また、小型シリンダーの内部も撮影できるように「きらりNINJA」を小型化し、操作性・利便性を高める改良を行いました。

1. 背景

シリンダライナーとピストンに囲まれた燃焼室では、低温腐食や異常摩耗が重大トラブルを引き起こす可能性があります。そのため、当社および日本郵船は燃焼室内部の隅々まで状態を詳細に把握できる「きらりNINJA」を2015年に開発し、本船での活用を進めました。この結果、高温環境下での長時間におよぶ点検が不要になったほか、内部の詳細な状態を画像データとして蓄積することが可能となりました。
今般、この画像データをSIMS(注1)や電子チェックリスト(注2)などの運航データと組み合わせ、状態をより高度に診断できるソフトウェアの独自開発や、ユーザーであるエンジニアらの意見を取り入れて小型化し、利便性を高めた「きらりNINJA-DS」(注3)の開発を行いました。

2. 燃焼室内診断の独自ソフトウェアの特徴

機関室内診断独自ソフトウェアの画面

機関室内診断独自ソフトウェアの画面

(1)画像を時系列で比較し、シリンダー内部の状態変化を視覚的に確認できる。
(2)画像を繋いで1枚の展開図にすることで、一目でシリンダー内部全体の状態を把握できる。
(3)画像と運航データ等を並べて表示し、状態変化の要因や運航データとの相関関係が
          推定できる。
(4)潤滑油の注油量や、油膜形成の程度等の適正な判断ができる。

この独自ソフトウェアにより、大きなトラブルに発展する前に適切な予防措置を講じるだけでなく、機器の状態に基づいた合理的な保守整備(Condition Based Maintenance)を実現することで、安全運航とメンテナンスコスト削減が期待できます。

3. 「きらりNINJA」の小型化

「きらりNINJA」は、360度撮影可能なカメラと照明で構成されています。停泊中のエンジンのピストン上に設置し、ピストンを上下1往復(約10分)すると燃焼室内部全周方向の自動撮影が可能です。耐熱性の向上、低電力化、データ送信や充電方式の改良を加え利便性を高めたほか、小型化によりこれまで困難だった直径50㎝以下のシリンダーにも対応可能となりました。

 
photo3

 

 

 

 

4. 今後の展開

日本郵船グループは今年3月に策定した中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”で持続的な成長を遂げるための戦略を示しました。これまで培ってきた経験と蓄積したデータを活用し、さまざまなパートナーと協働することで、新たな価値創造に取り組みます。

 

(注1)SIMS(Ship Information Management System)
日本郵船グループが開発した、運航状態や燃費、機器の状態などの毎時間の詳細な本船データを船陸間でタイムリーに共有するための装置。

(注2)電子チェックリスト
日本郵船グループが開発した電子タブレットを使用してさまざまなデータの収集・管理を行う装置。主に、機関室無人運転体制に移行する際の事前準備として、機器の温度や圧力、振動や漏えいの有無を確認・記録する。

(注3)きらりNINJA-DS
本装置はダイトロン株式会社(本社:大阪市淀川区、代表取締役社長:前 績行)との共同開発し、同社が製品化制作品。本年10月22日から出荷開始。

関連リンク

2015年8月19日付プレスリリース:業界初の舶用エンジン内部自動撮影装置「きらりNINJA」を共同開発