「運航」のデジタライゼーション 
ドライバルク部門のデータ活用

■データで最適な意思決定

 日本郵船のドライバルク部門は、グループのMTI、NYK Business Systemsなどと連携して2013年からデータ活用の取り組みを本格化した。それまではコンテナ船が中心だったSIMS(シップ・インフォメーション・マネジメント・システム)のバルカーへの掲載を進めるとともに、データにアクセスしやすい環境の整備と、データの見える化、運航改善活動に着手。その中で、SIMSデータを安全・効率運航に生かすための運航担当者向けのアプリケーション「LiVE for Operator」を開発した。このアプリケーションは、これまで各所・各人に分散していた運航に必要な情報を一つにまとめ、運航担当者が燃費を抑えた最適運航や安全運航に活用できるようにしたもの。これを用いて、例えば停泊中の船舶の燃料消費を見える化し、燃料を節約するといったことに取り組んできた。
 データの見える化から、さらに進んだ取り組みにも挑戦している。船舶運航の大きなリスクの一つが気象海象。例えば北太平洋の航海では、気象海象条件によって燃料消費量が大きく増減するが、そのリスクヘの対応はこれまでは船員の経験と勘によるところもあった。そこで、「LiVE
for Operator」と最新の解析技術を駆使して、気象海象リスクを見える化するプロジェクトを行った。現実世界で起きていることをデジタル空間上に再現する「デジタルツイン」の技術を応用したもので、まずコンピュータ上で各船の実海域での性能をモデルとして算出。その実海域性能モデルと実際の航路の過去の気象海象データを合わせて、季節ごと、航路ごとにコンピュータ上で仮想の航海を繰り返し、そのリスクを数値化する。その結果をバンカー(船舶燃料油)の最適なマージンや到着遅延リスク、速度配分の検討に役立てる。海技者、技術者と営業部隊がその情報をシェアすることで、最適な意思決定を行うことができる。

■長期用船にもIoT機器搭載

 郵船のドライバルク船隊でSIMSを搭載するのは現在約80隻。ドライバルク船社で、IoT(モノのインターネット化)機器をこれだけの規模で搭載する例は他にはない。SIMSの搭載は自社船から開始し、その後長期用船にも拡大。搭載船80隻のうち40隻超が長期用船となっている。今後は全基幹船隊にSIMSを搭載する計画で、「多くの船主にご理解をいただいている」(ドライバルク輸送品質グループ)という。
 SIMSの搭載は船主にも大きなメリットがある。SIMSからのデータを見える化する船舶管理会社向けのアプリケーション「LiVE for Ship Manager」を開発し、船主にも提供。アプリケーションをどう使うかを郵船の海技者が船主に丁寧に説明し、時には同じ画面を見ながら電話でやり取りしている。さらに、見える化だけでなく、重要な時に自動的に連絡が来るといった”知らせる化”も進めている。船主からの要望を反映させた新機能を実装したケ一 スもある。その一つが姉妹船の性能比較機能で、船主の了解を前提に、郵船の運航船の姉妹船のデータを船名や匿秘すべきデータを伏せた上で比較できるようにした。
 郵船社内でも、このような取り組みをきっかけとして、どんどん新たなアイデアが出てくるようになり、事業部門の要望がアプリケーションに反映されることで事業部門自体も活性化しているという。技術者が事業部門の中に入り込んでいることによって、こうした動きが促進されている。
 川口浩ドライバルク輸送品質グループ長は、「顕客、船主、船舶管理会社と当社は運命共同体で、船を止めないことが皆さまのメリットという大前提に立って活動を行っている」と述べた上で、われわれが目指すのは『世界ナンバーワンのドライバルク船隊』で、それに向けて新技術も活用していきたい。技術を開発するだけでなく、関係者の間で有効に活用し、フィ ー ドバックを行い、さらに発展させるというサイクルをうまく回すことが大事。技術者、海技者と事業部門が連携しながら実践しているのが当社の強みだ」と強調した。

CONTENTS

「日本郵船 デジタライゼーションへの挑戦」TOP

TOP INTERVIEW ー 新たな価値の創造に挑戦<日本郵船 内藤忠顕社長インタビュー>

SPECIAL INTERVIEW ー 省エネ・CO2排出削減が再び議論の中心に<当社代表取締役社長 田中康夫、当社船舶技術部門長 安藤英幸インタビュー>

日本郵船グループの攻めのデータ活用を支える基盤

「運航」のデジタライゼーション ー ドライバルク部門のデータ活用

「コラボ」でデジタライゼーション ー オペレーション×ハードで全体最適追求

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